これまで数え切れないほどのトイレ修理を手掛けてきた立場から、今の住宅設備における最大の盲点はウォシュレットからの水漏れであると断言します。お客様が「トイレの床が濡れている」と電話をかけてこられる際、多くの方は「便器が割れたのではないか」とか「配管が外れたのではないか」と心配されます。しかし、実際に現場に行ってみると、その原因の八割以上はウォシュレット本体の寿命による漏水です。現代のウォシュレットは非常に多機能ですが、その分だけ内部構造が複雑化しており、一箇所の不具合が連鎖的に大きなトラブルを招きます。特筆すべきは、プラスチック部品の経年劣化です。温水を作るためのヒーター付近の樹脂は、毎日の加熱と冷却の繰り返しによって確実にもろくなっていきます。ある日、その限界を超えて亀裂が入れば、そこから勢いよく水が噴き出します。床が濡れているのを発見してすぐに連絡をくださる方はまだ良いのですが、恐ろしいのは「じわじわ漏れ」です。これは本体内部のシール材が少しずつ痩せていくことで起こります。このタイプの漏水は、床に広がる前に便器との隙間で乾燥してしまい、代わりに不快な臭いや黄ばみを発生させます。そして、気づいた時には床の合板が水分を吸って、スポンジのようにボロボロになっているのです。私たちがトイレを丸ごとリフォームすることになる原因の多くは、こうした微細な水漏れの放置にあります。お客様の中には「まだ動くから修理でいい」とおっしゃる方もいますが、内部で漏水が始まっているということは、電気基板にも水がかかっている可能性があり、いつ発火してもおかしくない状態です。床を濡らす水は、ただの汚れではなく、火災のリスクを孕んだ危険信号なのです。また、トイレの床材についても一言申し上げたい。最近はデザイン性を重視して木製のフローリングにする家が増えていますが、ウォシュレットを設置する以上、それは常に浸水の危険と隣り合わせであるという覚悟が必要です。できればトイレだけでも、水に強く、異変に気づきやすいクッションフロアを採用することをお勧めします。家を長持ちさせるためには、設備が壊れるのを待つのではなく、壊れる前に先手を打って更新していくという意識改革が、何よりも重要です。