一年の中で最も給湯器のトラブルが頻発するのは、気温が急激に下がる冬の時期です。特に「水は出るのにお湯が出ない」という相談が殺到する背景には、寒さによる機器への過負荷と凍結という二つの大きな要因が潜んでいます。冬の朝、蛇口から水は出るのにお湯にならないという事態を避けるためには、日頃からの知恵と工夫が必要です。まず知っておくべきは、給湯器には凍結防止ヒーターが内蔵されているものの、それは本体内部を保護するためのものであり、外に露出している配管までは完全に守りきれないということです。氷点下の予報が出ている夜には、リモコンの運転スイッチを切り、お湯側の蛇口から少量の水を流し続けるという古典的な手法が非常に有効です。流す水の量は一分間に約四百ミリリットル、太さにして四ミリ程度が目安となります。これにより配管内の水が常に動くため、凍結を未然に防ぐことができます。また、配管に巻かれている保温材が破れたり剥がれたりしていないか、冬が本格化する前に点検しておくことも重要です。保温材の欠損はそこから熱が逃げ、ピンポイントで凍結を引き起こす原因となります。さらに、給湯器の使用環境を整える工夫も欠かせません。冬場は外気温が低いため、お湯を作るために給湯器は夏場よりもはるかに強い火力で運転を続けます。そのため、排気口周辺に雪が積もったり、霜よけの囲いが空気の循環を妨げたりしていると、不完全燃焼や過熱を引き起こしやすくなります。お湯が出ないというトラブルが起きた際、水が出るのであれば配管は生きていますから、慌てて熱湯をかけて配管を破裂させるようなミスを犯してはいけません。ぬるま湯を使って時間をかけて解凍するか、気温が上がるのを待つのが鉄則です。また、古い給湯器であれば、冬の負荷に耐えきれず基板や点火系が寿命を迎えることも多いため、十年を過ぎた機器は冬が来る前に点検を受けておくのが、突然の冷水シャワーに見舞われないための最大の防衛策となります。当たり前にお湯を使えることの幸せは、それを失った時に初めて痛感するものですが、日々の少しの配慮がその幸せを長く守ってくれるのです。